『反社会学の不埒な研究報告』初版正誤表

70ページ12行目
日本からノーベル経済学賞受章者が
   ↓
日本からノーベル経済学賞受賞者が

121ページ5行目
ブランド兄貴は辞退の翌年も
   ↓
ブランド兄貴は欠席の翌年も

294ページ10・11行目の名前のルビ
さや  さやこ
   ↓
さよ  さよこ

 以上3個所は初版本をさっと通読して気づいたので、再版分では修正されています。 誤字脱字のたぐいは、たぶん他にも何か所かあると思います。


●アマゾンのレビューのご指摘に関して

 発売早々にアマゾンにレビューを書いてくださったかたがいらっしゃいました。そのことはもちろんありがたいのですが、ただ残念ながら、レビュアーのご指摘が間違っていますので、ここで説明しておきます。
 まずは「賞マスト・ゴー・オン」のところ。菊池寛賞は菊池寛の死後に創設されたというご指摘ですが、これはレビュアーのカン違いです。菊池寛賞は、菊池寛本人が存命中の昭和13年に創設されました。その後いったん中断し、菊池の死後、昭和27年に改めて第1回として再出発したのです(参考文献:『最新文学賞事典』日外アソシエーツ)。よって、私の本の記述に間違いはありません。
 もうひとつは、「こどもが嫌いなオトナのための鎮魂曲」で引用した、アリエス『子供の誕生』に関してです。アリエスのテーゼは否定されているとのご指摘が抽象的なので、こちらの答えも抽象的になってしまいますが、私が理解している範囲内でお答えしておきます。
 中世には子供が小さな大人だったとか、その後無垢な存在になっただとかいう、アリエスの子供観はどうでもいいし、本書でも取り上げておりません。私は、昔の西洋のオトナたちが、必ずしもこどもを大事に養育していたわけではない、けっこう邪険に扱うことも多かったという事実を語っているのです。その裏付けとして、複数の研究者の著作から例を引いておりまして、アリエスはそのうちのひとつにすぎません。ヴァン・デ・ワラ、ポストマン、ドゥモースも似たような事実を異なる例で指摘していることを考えると、少なくとも私が引用した部分に関しては、アリエスの言説は正しいのではないかと思います(『子供の誕生』自体は、正直いって私もそれほど名著だとは思いませんが)

 これとはべつに、経済学のことに関する間違いを指摘するレビューも追加されましたので、ついでにこちらにもお答えしておきましょう。
 高度経済成長の寄与の大部分が人口増加としている点は誤認である、とのことですが、私はそんなことは申しておりません。これはレビュアーの誤解です。『研究報告』の71ページをもう一度読み直してください。私は、少子化が不景気を招くとおおげさに騒ぐ人たちに対し、もし人口の増減だけが経済成長の要因だとしたら、高度成長期は単に人口が増えてたから経済が発展したのだということになってしまいますけど、そうではないですよね、と皮肉を込めて指摘しているのです。
 もうひとつのリフレ派のことに関しては、少ない字数で説明できるような問題ではありません。しかし、経済学者の飯田泰之さんらしきかたもネットで同じ指摘をしていましたので(レビュアーが飯田さんの指摘を引用したのかもしれませんが)、ごく簡単ではありますが、私の意見を申し上げておきます。
 リフレ派親分の岩田規久男さんが土地問題の専門家であるということは、私も知ってますし、岩田さんの土地問題に関する著書も、とっくの昔に読んでおります。だからこそ、私は岩田さんが主張を変えたことに納得できないのです。というのは、岩田さんは以前は地価が高いことを問題として、税制と土地利用の面から解決案を提示していたのですが、リフレ論者に転じてからというもの、資産デフレはいけない――つまり、地価が安いことが問題だ、と逆のことをいい始め、土地問題に関してはぴたりと口を閉ざしてしまいました。なぜ経済学者や経済オタクのみなさんはこれを不思議に思わないのでしょう。
 岩田さんは、もう日本の地価は十分に下がったと見ているのかもしれませんが、私は現在の地価もまだまだ適正水準にはほど遠いと考えています。これは見方や立場の違いであり、私の本の記述が間違っていることにはなりません。
 また、リフレになれば賃金も上がるとリフレ派は主張しますが、その恩恵にすぐあずかれるのは一流企業にお勤めのごく一部の人だけです。労働組合もないような中小企業に勤める大多数の人の賃金が上がるのは、景気回復・物価上昇から1年後とか、場合によっては数年もあとのことなのです。こういう貧乏人の現実を知らないから、経済学者は、物価が上がれば賃金も上がるなどと気楽なことがいえるのです。それどころか、近頃じゃ成果主義なんて給与システムが流行ってますので、物価が上がっても「それはおまえの成果じゃないから賃上げの理由にならない」といわれてしまう可能性すらあります。

 誤解されては困るのですが、私はまともな批判にはちゃんと耳を傾けますし、事実関係の間違いのご指摘は歓迎します。今回の本の一部はサイトで公開済みのものですが、それに加筆修正する際には、サイトにメールで寄せられたご指摘を参考にしました。
 アカデミー賞については、マーロンブランドが欠席の翌年もノミネートされている、ジョージ・C・スコットはアカデミー以外の賞はもらったことがあるなどの詳しい情報をいただきました(それなのに初版では誤記してしまいましたが)。また、インチキ学位を発行する大学の情報や、『今昔物語』の解釈に関する御意見など、他にもいろいろと情報をくださったみなさんにこの場でお礼を申し上げます。書籍化の際に反映させたものもありますし、検討した上で結果的に無視するかたちになってしまったものもありますが、とりあえず、ご指摘のメールにはすべて目を通しています。
 ただ、ぜひともお願いしたいのですが、事実関係の間違いを指摘してくださる際には、根拠となる出典を明記していただきたいのです(ネットのうわさみたいなのはダメですよ)。そうすれば私のほうの確認作業もスムーズにいきますので、ひとつよろしくお願いします。


[目次]

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